最も早くWootingの製品に搭載されたラピッドトリガーは、もはやあらゆるゲーミングキーボードに波及しています。欧米だけでなく国内メーカーもこぞってラピッドトリガーに対応し、可変アクチュエーションポイントとともに定番化の流れができているように思えます。
特に中国のゲーミングデバイスやガジェットを扱うメーカーから、続々とラピッドトリガー対応のキーボードが発売されておりその勢いを感じます。Darmoshark KT68、Akko MOD007B-HE、MonsGeek M1 HEなどがいずれも中国メーカーのラピッドトリガー対応キーボード。
ここに新たに加わることになったのがVGNのサブブランドから登場したVXE ATK68です。
VGNとは
VGNは2022年に設立されたゲーミングデバイスを販売する中国のメーカー。2023年12月初旬の時点で以下のようなシリーズにカテゴライズされた製品を取り扱っています。
- Dragonfly F1
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軽量設計のワイヤレスゲーミングマウス
- Series S
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ハイエンドキーボード
- Series V
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ミドルレンジキーボード
- Series N
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エントリーキーボード
いわゆるトンボマウスのDragonfly F1シリーズは、以下のように4分類されます。
モデル | F1 | F1 Pro | F1 ProMax | F1 Moba |
価格 | $35.99 | $45.99 | $55.99 | $55.99 |
サイズ | 121.2×63.5×37.6mm | |||
マイクロスイッチ | Kailh Black Gold Manba | Huano Iceberry Pink Dot | ||
センサー | PAW 3395 | |||
チップ | Shanghai Broadcom | Nordic 52833 | Nordic 52840 | |
4KHz | 対応せず | 対応 | ||
重さ | 49g | 55g | ||
バッテリー持続 | 40時間 | 65時間 | 130時間 | 130時間 |
SMART SPEED | 対応せず | 対応 | ||
エンコーダー | Kailh GE2.0/TTC シルバーホイール | |||
ソール | PTFE |
驚きなのがやはり価格です。最も高いものでも$55.99と約9,000円にも満たない価格で、このスペックのマウスが手に入るとなると衝撃でしかない。
また、キーボードのS/V/Nのシリーズの違いは下記が参考になるかと思います。
N75 | V98 | S99 | |
価格 | $29.99~49.99 | $ 59.99 | $ 89.99~109.99 |
バックライト | ホワイト/RGB | ホワイト/ブルー | RGB |
接続 | Type-C 有線 | 2.4GHz/Bluetooth/Type-C 有線 | |
バッテリー | – | 4000mAh | 6000mAh |
キーキャップ | ABS/PBT | ABS | PBT |
対応システム | Windows/MacOS/Linux | ||
ガスケット | 対応 | ||
ホットスワップ | 対応 | ||
Nキーロールオーバー | 対応 |
マウス同様キーボードも低価格でありながら、いずれのシリーズもガスケットマウントを採用しホットスワップに対応するなど作りへのこだわりが感じられます。
今回紹介するラピッドトリガー対応キーボードVXE ATK68は、このVGNが展開するサブブランドという位置付けのようで、高いコストパフォーマンスが期待できます。
VXE ATK68の主な仕様
まずVXE ATK68の仕様は下記です。
サイズ | 65% |
寸法 | 311×102×27mm |
レイアウト | ANSI(US)配列 |
キー数 | 68キー |
スイッチ | Gateron 2.0 磁気スイッチ |
ラピッドトリガー | 0.1~4.0mm(40段階調整可) |
キーストローク | 4.1±0.2mm |
押下圧 | 30±10gf |
耐久性 | 1億回以上 |
ホットスワップ | 対応 |
ソフトウエア | 対応 |
バックライト | RGB対応(1,600万色調整可) |
接続 | 有線接続 Type-C (USB-C to A) |
対応OS | Windows / MacOS / Linux |
キーキャップ | PBT |
キープロファイル | OEM |
フレーム | アルミニウム |
VGNの正規代理店Rabbitでの販売価格は18,800円(2023年12月時点)。ラピッドトリガー対応のキーボードとしては安い部類に入いるとはいえ、キーボードの作りは決して安価な代物ではないようです。
キーボードの底はABS樹脂のプラスチックではありますが、側面のカバーはアルミニウムで覆われ質感も良さそう。内部はアルミニウム合金プレートと二重にシリコンパッドが搭載、さらにキーキャップはPBTとあって、打鍵感や打鍵音にも妥協はないようです。ホットスワップにも対応しており、自由なカスタマイズができる点も玄人好みと言えるでしょう。
あえて注意点を挙げるとすると、やはり新興の中国メーカーとあってJIS配列(日本語配列)がない点です。
性能面も現状トップレベルか
誠に勝手ではありますが中国メーカーの品質には多少の不安を感じていました。ただ、この数値を見る限り、現状もはやトップレベルの性能ではないかと。ラピッドトリガーは最短0.1mmにもできますし、0.1mm刻みでリセットポイントを細かく設定もできます。アクチュエーションポイントは、私の調べる限り数値の表記がありませんでしたので、この点だけは注意が必要かもしれません。公式サイトには「トリガーポイント」が0.1mm~4.0mmで調整可能、と表記されており、これがアクチュエーションポイントのことも指しているのであれば、最短0.1mmも可能ということになります。
遅延の面では、Smart Speed Xというモードに対応しておりより低遅延の接続ができるとうたっています。ポーリングレートは最高1,000Hzが保証されています。
また、専用のソフトウェアVGN HUBによってRGBの変更や、キーリマップ、マクロの設定などが可能とのこと。ハイエンドのゲーミングキーボードと似た設定もでき、特にDKS(ダイナミックキーストローク)にも対応しているとのことで多機能であることがうかがえます。これは1つキーで複数のアクションを実行できる機能でWootingなどに搭載されている機能。
少し心配な点は、海外のキーボード自体の品質が高くても、ソフトウェアが日本語に対応していなかったり使い勝手があまり良くないケースが散見されます。この点が心配な場合は、ラピッドトリガー対応キーボードは、冒険せずに大手メーカーであるRazerのHuntsman V3 ProやSteelSeriesのApex Proが無難です。もしくは圧倒的安心感の国内メーカーREALFORCE GX1やELECOM VK600Aなどが良いです。あとは価格との相談。
VXE ATK68は、現状サイズ展開が65%サイズ一択です。ゲーム用途としてはこのサイズ感が最も良いのでしょうが、1つのキーボードで作業もスムーズに行いたい場合、何かとコンパクトサイズは不便です。個人的にもタイピングを伴う作業では、結局フルサイズが最も良いと気づき、最近フルサイズのキーボードをポチることになりました。フルサイズのラピッドトリガー対応キーボードは、先ほどの挙げたHuntsman V3 ProとApex Proの他に、ポーリングレート8,000Hzに対応するCorsair K70 MAXがあります。
VXE ATK68を調べてみると、価格はかなり抑えながらも外装の材質や内部構造は決して安っぽくない印象を受けました。数値上での性能面には何ら問題ないため、ラピッドトリガー対応キーボードの新たな選択肢になっていると感じました。