これを書いている2024年9月時点で、最も性能の高いゲーミングキーボードはMelGeek Cyber01なのかもしれません。キーボード専用ブランドMelGeekがゲーミングに本格参入したことで、他のゲーミングデバイスを手掛けるメーカーを性能面で圧倒している印象です。行くところまで行き切った感じがします。
FPSやTPSといったゲームをプレイする上で、キーボードの性能の高さは、人によって見方は異なります。ただ間違いなく入力遅延を最小限に抑えるため、アクチュエーションポイント(AP)とラピッドトリガー(RT)の2つの要素は判断基準に入ります。
これまでの最も優れたキーボードは、アクチュエーションポイントとラピッドトリガーを自分好みに調整でき、最短で0.1mm程度に設定できるものでした。有名どころを上げると、Razer Huntsman V3 Pro、Apex Pro、REALFORCE GX1、ZENAIMといったキーボードです。
これらのゲーミングキーボードは今でも最高峰であることは間違いありませんが、キーボード専用ブランドMelGeekは、さらにAPとRTの2つの性能を極限まで切り詰めたようです。
MelGeek Cyber01とは
MelGeek Cyber01の主な仕様は下記です。
キーレイアウト | US配列 |
キー数 | 83 |
スイッチ | Gateron KS-20 White |
アクチュエーションポイント | 0.1~4.0mm |
ラピットトリガー | 0.1~4.0mm |
ホットスワップ | 対応 |
バックライト | 搭載 |
温度補正機能 | 搭載 |
LED | RGB |
接続 | USB |
ポーリングレート | 1,000Hz |
キーボード寸法 | 370×166×43.8mm |
本体重量 | 1200g |
2024年9月の現時点では、パソコンSHOPアークで24,000円で販売されています。Amazonでも流通しているようです。ただし、そこまで有名メーカーと言えないので、販売数量が十分かどうか定かではなく出回らなくなることも考えられます。
まず目を引くのがこのデザイン。身体改造が一般化した未来世界のゲームCyberpunk 2077をモチーフにした模様。コテコテのゲーミング感が全面に押し出された外観です。自分好みのバックライトを設定して、デスク周りを独特な世界観に演出できそうです。個人的にはこういった雰囲気も嫌いではないですが、人を選びそうなデザインではあります。
奇抜なデザインのキーボードに見えますが、キー配列はいたって一般的なものになっています。派手な見た目の一方で、基本に忠実なキー配列であるため、使っているキーボードから違和感なく移行できるかと思います。いわゆるTKL(テンキーレス)キーボードを少しコンパクトにしたサイズ。1つのキーボードでゲームも、テンキーを多用する作業もやるような人であればフルサイズがいいでしょうが、ほとんどの人にとっては、このくらいが丁度いいサイズ感ではないでしょうか。
注意したい点はUS(英語)配列のみ。JIS(日本語)配列しか受け付けない人は、必然的に購入候補から外れることになります。個人的には、数年前からプライベートではUS配列のキーボードを好んで使って、職場のキーボードはJIS配列ですが、何ら問題ありません。海外のキーボードメーカーは、わざわざ日本語配列を製造販売しないことも珍しくないので、キーボード好きならUS配列に移行しちゃった方がいい気がします。
MelGeek Cyber01はけっこう奇抜なデザインですが、ファンクションキーの間隔だったり、BackspaceキーやEnterキーの右にわずかな隙間があったり、一般的なキーボードと変わらないため、誤入力を防げるかと思います。ホットスワップ対応なので、キーキャップを少し落ち着いた配色に変えてみるのも面白そうです。
このキーボードは何といっても性能面が突出しているのが魅力です。先ほどの表の中で、アクチュエーションポイントとラピッドトリガーは「最短0.1mm~」と表記されていますが、ひと手間加えるとさらに向上します。
スイッチを変更することで最高性能へ
MelGeek Cyber01を購入すると、キースイッチはGateronのKS-20 Whiteがついています。このままだとアクチュエーションポイントとラピッドトリガーともに最短0.1mm。これでも十分な性能ではありますが。
このスイッチをJade KS-20T Switchに交換することで、ラピッドトリガーが最短0.01mm~に変更できます。まさに桁違いの数値です。
Jade KS-20T Switchは、パソコンSHOPアークで5個入り650円で販売されています。仮に、83個のキー全てをこのスイッチに交換するとなると、650円(5個)×17=11,050円(85個)の出費となります。パソコンSHOPアークの本体価格24,000円に11,050円を加えて、合計35,050円。なかなかのお値段。
さらにキーキャップを取り外して、スイッチを取り換える労力も考えると出費と根気を要するのは間違いなさそうです。ちなみに、キーキャップを取り外すためのキーキャッププラーは付属するようです。出費と労力を最小限に抑えるため、WASDなど、ゲームで使用頻度の高いキーの分だけ購入して交換するのも良さそう。
間違いなくJade KS-20T Switchに交換したMelGeek Cyber01であれば、既存の製品より桁違いのラピッドトリガーを設定することは出来ます。
とはいえ、数値上、アクチュエーションポイントとラピッドトリガーともに、最短0.01mmに設定できるHM66が存在するのも事実。
アクチュエーションポイントも0.01mmの設定が可能という点では、HM66の方が優れているとも言えます。やはりHM66こそ最高性能ではないか。ただ、ラピッドトリガーに関してはデッドゾーンを加味した判断が必要です。
デッドゾーンの調整が可能
ラピッドトリガー対応キーボードには、キーが押されて下に沈み込み、底に達すると、入力のオンオフが認識されない範囲がごくわずかに存在するようです。これがデッドゾーン。
例えば、ラピッドトリガーを0.1mmに設定しても、キーを最も底まで押し込んで、0.1m上に浮かせても、入力がオフにならないことがある。この入力が認識されない範囲は、キーボードによって異なり、メーカーから公表されていなかったり、不正確であったりするようです。
MelGeek Cyber01は、このデッドゾーンを専用のソフトウェアで0〜0.28mmの範囲で調整が可能です。限りなくデッドゾーンを小さく調整できます。
そもそもデッドゾーンを調整できるキーボード自体が珍しいことから、他より秀でていると言えます。先ほど挙げたHM66は「デッドゾーンは存在しない」とメーカーからうたわれているものの、実際にはわずかに存在するようです。また、最小設定にすると正常に動作しないこともあるようで、こういったことを踏まえると、MelGeek Cyber01が現状トップと言えるかもしれません。いずれにせよ現時点では、MelGeek Cyber01とHM66が、ラピッドトリガー対応キーボードの2トップとみています。
ついこの間まではラピッドトリガー0.1mmに胸が躍っていましたが、今となっては0.01mm単位で調整できるキーボードがあったりと、各メーカーの進歩が止まりません。まだまだ調べたことのないゲーミングキーボードはあるので、この2トップに匹敵する代物がないかさぐってみます。これからのキーボードの進化を追い続けようと思います。